川や池のそばで、茶色くて大きな動物を見かけたことはありませんか?
しっぽをパタパタさせながら泳ぐ姿に、「ビーバー?」「カワウソかな?」と思った人もいるかもしれません。
でもその正体は、ヌートリアという南米生まれの外来種かもしれません。
見た目はかわいらしいものの、日本では農作物を食べるなどの被害もあり、在来の生き物たちに影響を与える存在でもあります。

体長は50〜60センチほどで、しっぽを含めると1メートル近くになることもあります。
大きな前歯とずんぐりした体つきで、一見するとビーバーやカワウソに似ていますが、分類上はまったく異なる動物です。
泳ぎが得意で、後ろ足にはしっかりとした水かきがあります。
ただし体が重く、脂肪が少ないため、カワウソのように俊敏には泳げません。水の中をゆっくり進む、おだやかな泳ぎ方をします。
ヌートリアのすみかと暮らし方|水辺で生きる工夫

ヌートリアは川や池の土手に巣穴を掘って暮らしています。
その巣の入り口は水面の下にあり、外からは見えない“水中玄関”のような構造です。
この巣穴は、天敵に見つかりにくく、安全に出入りできるように進化したもの。
トンネルを進むと奥には乾いた部屋があり、そこで親子で休んだり、子育てをしたりします。
また、ヌートリアは潜るときに目・鼻・耳を閉じることができるしくみを持っています。
鼻と耳をきっちり閉じて水を防ぎ、目には半透明の膜(瞬膜)を閉じて視界を保ちます。
まるでゴーグルをつけているように、水の中でもまわりの様子を確認できます。
家族で暮らす『ゆるい群れ』親子で行動する習性
ヌートリアは単独で行動することもありますが、基本的には母親と子どもを中心とした家族単位で生活しています。
1回の出産で4〜6頭(多いと10頭近く)生まれるため、巣穴のまわりには小さな家族が集まっていることが多いです。
泳いだり草を食べたりする姿を何頭も見かけることがありますが、それは“群れ”というより、親子が一緒に行動している光景。
成獣のオスは基本的に単独ですが、エサが豊富な場所ではゆるやかに集まることもあります。
ヌートリアは、強い群れを作ることも、完全に単独で暮らすこともありません。
家族を中心に、ほどよい距離感で暮らす動物です。
なぜ日本にいるの?広がった理由と現在の分布
ヌートリアが日本に持ち込まれたのは1930年代後半のこと。
当時は毛皮が高級素材として人気があり、軍服やコート用に輸入されました。
しかし戦後になると、ナイロンなどの合成繊維が普及し、重くて高価な毛皮の需要は急速に減少します。
さらにファッションの変化や動物保護の意識の高まりも重なり、ヌートリアの毛皮は時代に合わなくなりました。
こうして、飼育されていた個体の多くが放され、各地で野生化しました。
現在では、岡山・広島・滋賀・京都・三重・福岡など、主に西日本の温暖な地域で生息が確認されています。
川やため池の土手に巣穴を作り、農作物を食べることで農業被害を起こすこともあります。
そのため、ヌートリアは「特定外来生物」に指定されており、許可なく飼うことや放すことは法律で禁止されています。
ビーバーとの違いは?しっぽと潜水の違いに注目

ヌートリアと間違えられやすいのがビーバーです。
見た目が似ていて、どちらも泳ぎが得意な点は共通していますが、生態は大きく異なります。
ビーバーは北アメリカやヨーロッパの寒い地域にすんでいて、木をかじって枝を積み上げ、ダムのような巣を作ることで知られています。
一方、ヌートリアは木を使わず、川岸に穴を掘って巣を作ります。
しっぽの形にも大きな違いがあります。
ビーバーは平たくて幅のあるしっぽ、ヌートリアは細長くて丸いしっぽです。
さらに、ビーバーは最大15分ほど潜水できるのに対し、ヌートリアは1〜2分程度で水面に戻ります。
完全な水中生活者というより、水辺に近い場所で暮らすタイプです。
そして何より、日本には野生のビーバーはいません。
ビーバーが見られるのは動物園などの飼育施設のみ。
日本でビーバーのような動物を見かけた場合、それはほとんどがヌートリアです。
カワウソとの違いは?泳ぎ方や歯の色が見分けのポイント

ヌートリアをカワウソと見間違える人も多いですが、カワウソはネズミの仲間ではなく、イタチ科(食肉目)の動物です。
ヌートリアは草を食べる草食性、カワウソは魚やエビなどを食べる肉食性。
泳ぎ方にも違いがあり、ヌートリアは体をあまりくねらせず、ゆっくり泳ぎます。
見分けるポイントは前歯の色。

ヌートリアの前歯はオレンジ色で、鉄分を含んでいるためこの色をしています。
また、カワウソのしっぽは太くてしなやかですが、ヌートリアのしっぽはネズミのように細長い形をしています。
カピバラに似ている?共通点とちがいを紹介

ヌートリアを見て「ビーバーかな?」「カワウソかも?」と思う人は多いですが、実際にはカピバラに近い仲間です。
どちらも南アメリカ生まれの草食げっ歯類で、水辺で生活するという共通点があります。
- 丸い体と短い脚
- オレンジ色の前歯(鉄分を含む)
- 後ろ足の水かき
- 草を主食とする食性
泳ぐ姿もよく似ています。
ヌートリアがおしりを先に沈めるように潜る姿は、カピバラの動きにもそっくりです。
ただし、体の大きさと性格には違いがあります。
ヌートリアは体長50〜60cmほどで人に慣れにくい野生動物。
カピバラは体長1m以上で、穏やかで人懐っこい性格です。
見た目はビーバー、雰囲気はカワウソ。
でも、系統的にはカピバラに近い南米の水辺動物です。
ヌートリアはペットにできる?禁止されている理由
ヌートリアは見た目が愛らしいものの、ペットとして飼うことはできません。
日本では環境省によって「特定外来生物」に指定されており、飼育・繁殖・販売・運搬などがすべて禁止されています。
許可なく飼うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になることもあります。
また、ヌートリアを勝手に捕まえたり移動させたりすることも法律で禁止されています。
見かけても触らず、そっと見守りましょう。
まとめ|ヌートリアはビーバーでもカワウソでもない外来げっ歯類
ヌートリアは南アメリカ原産の大型げっ歯類で、戦時中に毛皮目的で日本に導入され、今では野生化しています。
見た目はビーバーやカワウソに似ていますが、実際にはカピバラに近い仲間。
半水生の生活に適応し、巣穴の入り口を水中に作るなど、独自の生態を持っています。
日本では特定外来生物に指定されており、飼うことも捕まえることもできません。
もし水辺で出会ったら、静かに観察するだけにとどめましょう。